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 胡麻相撲名鑑 
枕角界の伝説・胡麻相撲名鑑です(^^;
ぴぃちゃん胡麻利で、この名鑑を綴っていきたいと思います♪
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その四 「胡麻吉・胡麻千代物語」 (十一)

2006年2月26日(日)(雨)

 山を一つ越えた胡麻緋衣はまだ走り続けた。履物はとうに脱げ、小石や小枝が針のように足の裏に刺さり、草が鋭利な刃物のように脚を切り付け、胡麻緋衣の美しい大根のような白い足はずたずたになった。胡麻緋衣の後ろには赤い足跡と二本の槍を引きずった跡が続いていた。幸いなことに、既に痛みは感じなくなっていた。だから走り続けることができた。

 とうとう脚に力を入れているかどうか分からなくなってしまった。歩くのと変わらない速さになってしまったが、まだ走り続けた。胡麻緋衣は走っている間、一つのことを考え続けていた。

 この道の先には素朴で幸せな暮らしがある。胡麻吉と幸せに暮らせる。ここで止まったら胡麻吉と引き裂かれる。胡麻吉のいない人生は意味が無い。死んだも同然。だから、生きるために私は走る。生きるために走り続ける。

 胡麻緋衣が望むものは平々凡々な暮らしだった。それを得るために命をいとわず走り続けた。とっくに足は限界を超えていたが、そう思うと不思議にも力が湧いて出た。

 胡麻緋衣はついに崖の上へ出た。海だ。海の向こうの空は少し青くなっていた。海に沿うように走る、断崖絶壁の中にある小道、ここを抜けたら隣国に入る。追っ手はそこまでは来られない。あと少しだ。胡麻緋衣が望む、素朴で平凡な暮らしが空の向こうに微かに見えた。

 岸壁の小道は途中で切れていた。胡麻緋衣は直前で気付いたが足を止めることができず、そのまま崖から落ちてしまった。二人と二本の槍は漆黒の海の中へ消えていった。掴み掛けていた平凡で幸せな暮らしが、胡麻緋衣の手からするりとこぼれ落ちた。
(十二 に続く)

by胡麻利
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その四 「胡麻吉・胡麻千代物語」 (十)

2006年1月31日(火)(雨)

 鬼の出現から消滅まで僅かな時間ではあったが、胡麻緋衣がそこから逃げるには十分だった。胡麻緋衣は胡麻吉を背負ったまま、ひたすら走り続けた。

 どのぐらい走っただろうか。遥か後方に見えた敵の姿も今はもう見えない。誰も追って来る者はいない。しかし油断できる状況ではないことを胡麻緋衣は良く分かっていた。とにかくひたすら走った。

 背中には体の大きな胡麻吉、そして胡麻吉の両の腕に握り締められた二本の槍、それら全ての重さを体に感じながら木々の間を疾走した。胡麻吉と胡麻緋衣を結ぶ紐が体に食い込み、血が滲み出ていた。背中に感じている重さと痛みは、胡麻緋衣の人生の困難さを象徴しているかのようだった。
(十一 に続く)

by胡麻利
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その四 「胡麻吉・胡麻千代物語」 (九)

2006年1月5日(木)(晴れ)

 昔話でしか聞いたことのない鬼が突然、それも二体も現れたのだから、敵が驚かない訳がなかった。蜘蛛の子を散らすかのように我先にと逃げ、悲鳴や怒声が上がり、混乱を極め、さながら地獄絵図のようだった。

 鬼は巨大な体、兇悪な風貌を持つため、古の世から災厄をもたらし、人間を喰らうと恐れられているが、元来鬼は心優しく、友好的である。事実二人の鬼の金棒は天高く振り回され、誰にも当たることはなかった。

 どこからともなく二本の矢が放たれた。不意を突かれた二人の鬼はよけることができず、矢は鬼の体に刺さった。矢は細く短く、鬼にとっては蚊が止まった程でしかなかったが、鬼の動きが止まった。矢は火矢だった。鬼のつぶらな瞳から大粒の涙が流れたかと思った瞬間、まばゆい閃光を放ち鬼は燃え上がった。そして辺りに千代紙の灰が舞った。
(十 に続く)

by胡麻利
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その四 「胡麻吉・胡麻千代物語」 (八)

2005年12月16日(金)(曇りのち晴れ)

 胡麻緋衣は、今ここで二人が倒れたら全てが終わることを知っていた。胡麻緋衣の華奢な体には胡麻吉は余りにも重過ぎた。しかも胡麻吉は二本の槍を握ったままだった。それでも胡麻緋衣は倒れなかった。

 脚に力を込め、胡麻吉の体を支え胡麻緋衣の両手に奴っこさんに折った二枚の千代紙があった。それをそっと口元に寄せ、何かを囁いた。二枚の奴っこさんは勢い良く飛び、胡麻緋衣の前後に分かれて巨大な鬼に変化した。金棒を天高く振り回し、まるで胡麻緋衣を囲んで守るかのようだった。鬼の一人は茶色で頭に二本の立派な角があり、もう一人は黄色で三角の立派な耳があった。
(九 に続く)

by胡麻利
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その四 「胡麻吉・胡麻千代物語」 (七)

2005年12月16日(金)(曇りのち晴れ)

 無敵にも思える胡麻吉の槍だが死角があった。上である。正面に突き出している槍をいきなり上へ向けることはできない上に、回している槍を上に向ければ、反対側が地面に当たってしまう。

 待ってましたとばかりに周囲の敵が一気にふらふらの胡麻吉に迫った。胡麻吉は顔に岩石を乗せたまま崩れ落ちた。

 胡麻吉が地面に落ちる直前、突然立ち上がった。敵は驚き動きを止めた。胡麻吉の顔面の岩石が落ちた。胡麻吉の顔は完全に気を失っている顔だった。背中の胡麻緋衣が胡麻吉を支えていた。細い足で大地を踏み締め、決して倒れまいと仁王立ちしていた。
(八 に続く)

by胡麻利
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その四 「胡麻吉・胡麻千代物語」 (六)

2005年12月1日(木)(晴れ)

 千人ぐらい倒しただろうか。敵の中にもあっぱれな者が出てきた。二本の槍をかわして胡麻吉の懐に入ってきたのだ。槍は射程が長い分、懐が弱い・・・というのは他の槍使いの話。胡麻吉は違った。持っていた槍の一本を宙に放り投げげんこつ一発で倒し、落ちてきた槍を再び手に取った。

 敵の攻撃が一瞬止まったところで胡麻吉は賭けに出た。数が多すぎて倒しても倒してもきりが無い。二本の槍を繋ぎ会わせ一本の巨大な槍を作った。それを旋回させて突撃した。正面突破である。思わぬ行動に敵は怯んだが、それを待っていた者がいた。木の上で息を殺していた者がいたのだ。

 胡麻吉の頭上に岩が雨のように降ってきた。胡麻吉は物凄い勢いで飛んでくる岩石をよけ続けたが、ついに、とびっきり大きな岩石を顔面で受け止めてしまった。胡麻吉は気を失った。
(七 に続く)

by胡麻利
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その四 「胡麻吉・胡麻千代物語」 (五)

2005年11月20日(日)(晴れ)

 追っ手がじわりじわりと迫ってきた。緊張が高まった。先に動いたのは胡麻吉だった。一瞬で間合いを詰め一撃、目にも留まらぬ速さだった。そして怒涛の突き。一撃を喰らった追っ手は吹っ飛び、後ろの者たちを巻き添えにした。左の槍は回転を上げながら背後から近付く追っ手を払った。一振りで五人が体をくの字に折り曲げ、宙に舞った。

 胡麻吉に近付こうとする者は槍の恰好の餌食になった。突きをかわしたかと思えば真横から槍に払われ、払いをかわしたかと思えば突かれた。逃げようとすれば槍の思う壷だった。槍はどこまでも届いた。槍は狙った者を仕留め損なうことはなかった。槍は更に回転を上げ、甲高い風切り音と鈍い打撃音を同時に放った。胡麻吉の強さは尋常ではなかった。
(六 に続く)

by胡麻利
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その四 「胡麻吉・胡麻千代物語」 (四)

2005年11月10日(木)(晴れ)

 一里ほど走ったところで胡麻吉の嫌な予感は的中してしまった。さっきから誰かがつけているような気がしていたのだが、それを確信したときは既に手遅れだった。追っ手に取り囲まれたのだ。

 暗闇の中の誰かが叫んだ。胡麻吉殿、我等はそなたを殺めたくない、胡麻緋衣殿をその場に置いて立ち去れば今回のことは不問にしよう、と。胡麻吉の選ぶ道は二つ、言われる通りにするか、戦うか。

 胡麻吉は懐から革紐を取り出し胡麻緋衣に二人の体を固く縛れと言いながら胡麻緋衣を背中合わせに背負った。槍を二本両手に握り、ゆっくりと回し始めた。降参などという考えは毛頭なかった。

 胡麻緋衣をここに置いても幸せは無い!
 俺が胡麻緋衣を守る!
(五 に続く)

by胡麻利
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その四 「胡麻吉・胡麻千代物語」 (三)

2005年11月4日(金)(晴れ)

 悪人に襲われている見世物小屋の座長を助けた胡麻吉は見世物小屋で働くこととなった。胡麻吉は豪腕で意外と手先も器用だったのでどんどんと芸を覚えた。体が大きかったので胡麻吉の芸には迫力があった。座長も胡麻吉に惚れ込み、いつかはこの一座を継がせようと思っていた。

 ある日、胡麻吉は綱渡りの練習中に落下し意識不明の重態になってしまう。混濁とした意識の中、胡麻吉は奇妙な夢を見た。胡麻吉は名のある武将で特に槍を使わせたら右に出る者はなく「槍の胡麻吉」と呼ばれ畏怖されていた。胡麻吉には幼なじみの許婚がおり、名を「胡麻緋衣」(ごまぴぃ)と言った。

 ある風の強い夜のことだった。眠っていた胡麻吉が気配を感じ起きると枕元に胡麻緋衣がいた。こんなことは今までになかったので激しく驚いた。胡麻緋衣は言った。お父様の話を聞いてしまったの、私は敵国の殿様に嫁がされる、そんなのは絶対に嫌、お願い、私をさらって、と。草木も眠る丑三つ時、二人は固く手を握り合って山道を駆け出した。

(四 に続く)

by胡麻利
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その四 「胡麻吉・胡麻千代物語」 (二) 

2005年11月1日(火)(晴れ)

 意識を取り戻してからの胡麻吉の回復は凄かった。烏に啄まれた痕はみるみる塞がり、一週間経った頃にはすっかり元気になった。

 胡麻千代は困った。何せ胡麻吉の体はでかい。胡麻吉がもりもりと何でも食べたために夏の間にこつこつと貯めた薬草と丸薬と食糧が底をついてしまった。間もなく冬が来る。このままでは二人とも餓死してしまう。胡麻千代は目の前が真っ暗になった。

 胡麻千代は一計を案じた。今ちょうど村に見世物小屋が来ている。胡麻吉は体が大きくて力持ちだ。きっと良い働き手になるだろう。よし、そうと決まれば善は急げだ。夜が空けたら直ぐに胡麻吉を売り飛ばしに行こう。

 その時、胡麻吉本人も心を痛めていた。自分のせいで命の恩人を困らせている。これ以上ここにいては更に迷惑を掛けるだけだ。よし、そうと決まれば善は急げだ。眠っている胡麻千代に気付かれないよう、そーっと家を出た。

 次の日の朝、胡麻吉がいないことを知り、胡麻千代は青くなった。外は猛吹雪。食糧は何も無い。胡麻千代の人生の中で最も厳しい冬になることは容易に想像できた。胡麻千代の心の中も猛吹雪だった。

(三 に続く)

by胡麻利
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その四 「胡麻吉・胡麻千代物語」 (一)

2005年10月29日(土)(雨のち曇り)

 ある日、胡麻千代が毎日の修練の走り込みをしている砂浜で烏が群がっているのを見つけた。珍しいことではない、おおかた鯨かイルカの死骸が打ち上げられたのだろうと思ったが、どうも様子が違う。烏の群れの中に誰か居る!そう見抜くや否や胡麻千代は音無く物凄い速さで烏に一直線に近付き、手に持っている木刀を一降りした。何十羽の烏が叩き落とされ、残った烏も逃げて行った。そこには巨大なあざらしが息も絶え絶え倒れていた。胡麻千代は体が小さいので、仕方なくそのあざらしの足をむんずと掴み、引きずって帰った。ついでに可哀相な死んだ烏も持って帰った。

 家に連れ帰ったものは良いが、さて、これからどうしたものか。胡麻千代は悩んだ。巨大なあざらしは三日三晩起きなかった。四日目に巨大なあざらしが目を覚ましたので胡麻千代は喜んだ。巨大なあざらしは名を胡麻吉と言った。しかし、それ以上のことは何も思い出せないようだった。

 これが二人の数奇な運命の出会いだった。

(ニ に続く)

by胡麻利
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その三 「胡麻之里」 (下) 

2005年10月7日(金)(晴れのち雨)

 すると奇跡が起きた。今にも死にそうな師匠が元気になったのだ。師匠が立ち上がったとき、周囲の者は声を失う程驚いたが一番驚いていたのは師匠本人だった。静寂が流れた。師匠はさっきのことを思い出し、周囲の者を片っ端から思いっ切りゲンコツで殴った。ゲンコツの威力は凄まじく、殴られた者は亀のように首がめり込んだ。

 堰を切ったように全員がちゃんこに群がり始めた。味はともかく胡麻之里のちゃんこはやはり凄いと認めた。俺達はこのちゃんこを3年も待ち続けていたじゃないか、何を今更躊躇うことがあろうか。全員が目を閉じ、鼻を塞ぎ、耳も塞いで一気に喉に流し込んだ。すると、全身から力が漲ってきた。病気が治り、怪我の痛みも消えた。胡麻之里のちゃんこはパワーアップしていた。そして味もパワーアップしていた。想像以上にまずかった・・・。全員が胡麻之里ちゃんこの復活を、顔をしかめながら、涙を流しながら、喜んだ。亀みたいになった力士も泣いていた。胡麻之里は皆の涙を見て泣いた。やはり相撲が好きだ、大好きだ、相撲のために、ここにいる皆のために、師匠のために、一生を捧げよう、胡麻之里はそう思った。

 その後、胡麻之里の元にちゃんこを作り方を請う者が続々現れ後を絶たなかったが、胡麻之里は分け隔て無く全ての者に作り方を教えた。胡麻相撲協会は胡麻之里は角界に無くてはならない人物だと評価し、そして横審の意見を無視して、驚くべき決定を下した。胡麻之里に特別に一代年寄の権利を与えたのだ。胡麻之里は感謝し、再び涙を流した。関取になれなかった唯一の親方、胡麻之里親方の誕生である。

 親方になったことにより給与を貰えるようになった胡麻之里の行動範囲は広がった。胡麻之里は、ちゃんこだけでなく様々な食品や調味料の開発も手掛けた。胡麻煎餅や胡麻アイスや胡麻プリンや胡麻ドレッシングなどなど。余りに多すぎてここに全てを紹介することはできないが現在もその幾つかは残っている。もしスーパーやコンビニ等で胡麻の名を冠した商品を見掛けたら、偉大なちゃんこ親方、胡麻之里のことを思い出さずにはいられない・・・。

 最高位、序二段。
 関取にならずして一代年寄襲名。(史上唯一)

 因みに一度だけ胡麻之里が我が家でちゃんこを作ってくれたことがあります。豆腐カレーちゃんこです。栄養満点ですが、味はやはり胡麻之里でした・・・。

 そして今、家にいる胡麻の里は胡麻之里の孫です。

(胡麻相撲で唯一ちゃんこで名を遺した力士 「胡麻之里」・完)

by胡麻利
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その三 「胡麻之里」 (中) 

2005年10月5日(水)(雨)

 部屋の騒ぎは角界全体に波及した。胡麻之里のちゃんこが食べられなくなることは、胡麻之里のちゃんこを愛する者にとって文字通り死活問題となった。食欲が無くなり激ヤセする力士、逆に激太りする力士が続々現れた。病気になる者、怪我する者も多かった。特に師匠の落胆ぶりは激しく、大病を患ってしまった。しかし彼らは耐えた。じっと待った。必ず胡麻之里は帰ってくる、そう信じて微塵も疑わなかった。

 三年後、胡麻之里が戻って来た。胡麻之里は変わり果てた弟弟子の姿に心を痛め、早速ちゃんこを振る舞った。力士たちがこの日をどんなに待ち望んでいたことか!噂を聞き付けた他の部屋の力士も駆け付け、入院していた力士も病院を脱走し、危篤状態に陥っていた師匠も生命維持装置をこっそり外して駆け付けた。

 胡麻之里のちゃんこが遂にできた。それを見た者全てが声を失った。見るからに怪しい・・・とても食べ物とは思えない。臭いも凄まじい。こんな物を口に運ぶぐらいなら、走行中の列車の前に飛び出る方が簡単なぐらいだ。確かに胡麻之里のちゃんこは元々まずかったがここまで酷かっただろうか・・・一同全員がそう思った。誰が一番最初に食べるか、相談が始まったが直ぐに決まった。幸い死に掛けの師匠は目も見えなければ鼻も利かない、師匠に食べさせてみよう。師匠が死んだら、そこまでの命なのだろう、生き延びたら自分も食べてみよう、全員一致でそう決まった。付き添いの力士が師匠の口元にちゃんこのスープを運んだ。直ぐに口にするかと思ったが意外に抵抗したので力士全員で押さえ込み無理矢理口に流し込んだ。

(下に続く)

by胡麻利
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その三 「胡麻之里」 (上) 

2005年10月4日(火)(曇りのち雨)

 胡麻相撲で唯一ちゃんこで名を遺した力士。

 百場所も序ノ口と序二段をさまよっていた胡麻之里は本人も語っていたように恐らく相撲の才能が無かったのだろう。相撲が大好きで人一倍稽古をするのだが報われなかった。取組の内容は要領の悪さが目立った。相手力士に弄ばれるように負けることもしばしばだった。しかし、どんなに負け続けても、どんなに酷い負け方をしても、決して弱音は吐かなかった。寧ろ相手の上手さを誉め讃えた。

 人柄は素晴らしく、人望も厚かった。多くの弟弟子の付け人をやった胡麻之里だが、胡麻之里の働きのお陰で関取は今日の一番のみに集中できた。事実、胡麻之里が付いた関取は例外無く、直後に大出世している。相撲では要領の悪かった胡麻之里だが、他人に対しては要領が良かった。胡麻之里は他人を思いやる思いやりの心が強すぎたのかも知れない。付け人をやらせたら横綱級と皮肉を言われることもあったが、胡麻之里にとってそれは最大の賛辞だった。

 胡麻之里の意外な才能は他にもあった。それはちゃんこの腕である。ちゃんこは皆で食べるもの。思いやりの心が強い胡麻之里ならば、ちゃんこの腕が良かったのは当然のことなのかも知れない。

 但し、変な味だった。はっきり言ってまずかった。しかし、まずいだけでは無い不思議な個性的な複雑な味だった。誰もが最初の一日目は眉をしかめ、二日目に慣れ、三日目には癖になった。四日目には忘れられなくなり、五日目には夢でうなされるようになった。たったの五日で全ての力士を虜にするちゃんこだった。一週間も経つと力士どころか親方までもが胡麻之里のちゃんこに群がるように、我先に我先にとちゃんこの周りに集まった。横綱胡麻乃花は「あれほどまずいちゃんこは他には無いが、あれほど美味いちゃんこも他には無い」と絶賛した。

 胡麻之里に転機が訪れたのは入門から三十年後のことだった。負け越して序ノ口転落が確実になった胡麻之里の元に有名な料理人が訪れたのだ。「胡麻之里には料理人の素質がある、もっと美味いちゃんこを作れるようになればもっと多くの人が喜んでくれる」その言葉に激しく心を揺さ振られた胡麻之里は次の日、「ちゃんこを作るために出掛けてきます、必ず戻ります」という短い書き置きを残して忽然と部屋から消えてしまった。

 部屋は大騒ぎになった。ちゃんこのほぼ全てを胡麻之里に任せていたので、胡麻之里の失踪はちゃんこの消滅を意味した。ちゃんこの無い相撲部屋など洒落にならない。しかも、もっと悪いことに長年胡麻之里だけがちゃんこを作っていたことによって、他の力士も親方さえも、すっかりちゃんこの作り方を忘れてしまっていた。飢え死にするかも知れない・・・。その場にいた全員が顔面蒼白となった。

 その頃、胡麻之里は部屋の大騒動など知る由もなく、胸をときめかせながら大海原を渡っていた。満面の笑みでちゃんこを食べる皆の姿を想像しながら一所懸命に泳ぎ続けた。

(中に続く)

by胡麻利
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その二 「胡麻風」 

2005年10月1日(土)(晴れ)

 第五枕王朝時代を代表する伝説的名横綱。

 少年時代は機械弄りが大好きでガラクタ置場にある電気製品の分解組立に毎日没頭する変わった子供だった。そのためか学問には滅法強く、読み書き算盤の覚えの早さは大人たちを驚かせた。

 少年時代の体形は決して大きくなく人並みで、内向的な性格が災いしてか同級生に虐められることもあった。そこで親が半ば強引に合気道を習わせるが、これが胡麻風少年の心にジャストフィットしたようで持ち前の研究熱心さも手伝いめきめきと上達していく。

 中学卒業後、スカウトされた親方の元に入門。合気道を学んだ胡麻風にとって、お相撲さんの動きは余りにも遅過ぎた。そして分かり易かった。得意技は叩きと投げと反り。軽量力士の悲しさかな、回しを取られてしまったらお終いだが、相手の呼吸に合わせた合気道特有の動きで力士たちを翻弄し、ばったばったと投げ飛ばした。

 昇進は順調過ぎるほど順調だったが、新入幕直後に二場所連続負け越してしまい挫折を味わう。これが薬になったのか、更に素早い動きを追究した。関脇になった頃には誰も胡麻風の回しに手を触れられる者はいなくなった。当時の横綱胡麻乃花の「胡麻風は風のようだ」の言葉は余りにも有名。

 その後、周囲の期待通り、横綱に昇進。連勝街道を真っ直ぐひた走る。枕暦1996年には遂に年間無敗の大偉業を達成。ところが大事件が発生した。翌年初場所の途中に失踪したのだ。現在も生死不明である。相撲道を極めてしまった胡麻風は、本当に風になってしまったと、多くの人が今もなお信じている。

 最高位、横綱
 幕内在位、十八場所
 幕内最高優勝、十回
 六場所連続全勝優勝は史上唯一。
 年間無敗は史上唯一。

 実は今、家にいる胡麻風は二代目胡麻風です・・・。
 長島スパーランドでうろうろしているところを捕獲しました・・・。
 初代と違って、動きはそんなに速くないです・・・。

by胡麻利
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その一 「胡麻王」 

2005年10月1日(土)(晴れ)

 第五枕王朝時代を代表する名力士。

 入門するや否やめきめきと頭角を表し幕下まで一気に登り詰め、とうとう幕下筆頭となり新十両を大いに期待されたが、まさかの七戦全敗の屈辱的敗北を喫する。その後六場所連続負け越し、序ノ口と序二段を行ったり来たりする番付が続き、一時期は引退をも考えるが親方の説得と持ち前の強靭な精神力により徐々に番付を上げ、入門から十年後、悲願の十両となる。

 その後も番付を上げ続け、枕暦1995年の春場所、前頭五枚目の胡麻王は全勝街道をまっしぐら。十四日目に横綱胡麻風を破ってしまったため、千秋楽では異例の横綱対胡麻王が組み直された。相手は全勝の横綱胡麻乃花。胡麻乃花の突き押しを胡麻王は二度うっちゃるも、二度とも同体の取り直し。しかも二度目の落下の際に両者負傷し、引き分け。十四勝一分けで優勝者が二人出るという大珍事となった。次場所で関脇に昇進し大関取りが期待されたが、優勝時の怪我が原因で二度と土俵に上がることはなかった。

 優勝時の「石の上にも胡麻」は余りにも有名。

 最高位、関脇
 幕内在位、五場所
 幕内最高優勝、一回

 今、家にいる胡麻皇様は胡麻王の子供です・・・。

by胡麻利
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企画制作:ぴぃちゃん&としお(pierre238ff@yahoo.co.jp)
開設日:2005/08/08 最終更新日: