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| ◆ 初めてのベスト ◆ | ||||||||||||||||
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2001年の3月、家から車で5分ぐらいのところに新しくビリヤード場がオープンした。 店名は「マーキュリー」。 インターネット上でビリヤード関連のコンテンツを見尽くした人ならご存知のことと思うが、あの「超ビリ」を立ち上げたミウラさんが開いたお店である。 お店の雰囲気、お店に通う常連さんたち、そして店長の人柄、とても居心地の良いお店であることに気がつくことには、そう時間はかからなかった。 まるで当然のように私はこのお店に通うようになった。 開店してから暫くしてマーキュリーは協会に加盟した。マーキュリーから公式戦へのエントリーが可能となった。 この頃、ミウラさんはベストに入れる刺繍のデザインばかりを考えていた。(少なくとも私にはそう思えた。) ほどなくしてロゴの形が決まり、大きさが決まり、色が決まった。 すぐさま自分と妻のサイズをミウラさんに伝えた。 6月3日に公式戦「三河ジュニア」が行われるということを知り、早速マーキュリーからエントリーした。 ミウラさんの話だと、ベストがこの日に間に合うかどうか微妙だとのこと。 もしも間に合えばベストを着て出場しなければならないだろう。 私は着てみたいと思う反面、着て出場するのはまだ早いと思っていた。 結果、どうやら刺繍屋さんが頑張ってくれたらしく、三河ジュニアの2日前にマーキュリーのベストが出来上がった。 そんな訳で、ベスト着用で参戦することに決定! どきどき・・・。 今回の三河ジュニアで私が公式戦に出場するのは2回目となる。 最初に出場したのは今年の2月に行われた新人戦。3先(女性2先)の予選ダブル決勝シングルエントリー数は約300名。かなり規模の大きな大会だ。で、結果はというと、負け(0−3)負け(1−3)で速攻で会場を後にした。初めて出場したHTのように、頭が真っ白になってしまい、何もせずに終わってしまった・・・。 今回はそんな悔しい思いをしたくない! 前回が前回だけに自分がどこまで行くことが出来るのか予想しにくいが、少なくとも後悔するような試合にしたくない。 そんな訳で今回はいつもと違い、具体的な目標を立てずに試合に臨むことにした。ひょっとしたらこの方が萎縮せずに伸び伸びと撞けるかも知れない。ひょっとしたらこの方が良い結果が出るかも知れない。 よっしゃ、今回の目標は「負けてもいいから絶対にチビらない、しっかりとした球を撞く、精一杯撞く」だ!! 「ねぇねぇ。」 「ん? なんすか、ミウラさん。」 「マーキュリーからエントリーする4人で賭けをしようかと思うんだけど、乗らない?」 「おっ、なんすか?」 「決勝トーナメントに残れなかったら坊主になるっていうの、どう?」 「面白そうですね〜! でも、ミウラさんが予選落ちしたら、ミウラさん、本当に坊主になります?」 「なる!」 「よっしゃ、そこまで言うならその賭けに乗りましょう!」 「バリカン持ってくるから、試合が終わって帰ってきたらマーキュリーで断髪式やるぞ!」 「・・・。」 目標変更。「絶対に何がなんでも決勝進出」だ!!! そう、絶対にだ!!! 絶対に絶対、何が何でもだ!!! 因みにこの三河ジュニアはハンディ戦ではない。全ての人が4先だ。またA級は出場不可だということも併せて考えると事実上のB級戦ということになる。・・・ということを知ったのはこの後だった・・・。私、未だにC級から脱出できていないんですけど・・・。 自分がホームの名前が入ったベストを着て試合をするだなんて今まで考えたこともなかった。 去年、読売オープンや岐阜国際オープンを観戦したとき、アマチュアの多くはベストを着ていた。黒いベストにアルファベットの刺繍というものが圧倒的に多かったが、色物のベストもあった。毛糸のニットにアップリケというものもあった。巨大な漢字というのもあった。店名や団体名だけのものが多かったが、個人名が刺繍されているものもよく見かけた。 ベストを着ているアマチュアは強そうに見えた。 はて、何故強そうに見えたのだろうか? 私はなぜそのように感じたのだろうか? カジュアルな服ではなく、ビリヤードプレーヤーとしての正装をしていたからカッコ良く、そして強そうに見えたのだろうか? 名前を背負っている以上、マナーに反すること、他人の迷惑になること、他人に不快感を与えることは出来ない。いや、むしろ模範的であるべきだろう。 だからこそベストを着たアマチュアは強そうに見えたのだろう。 ベストを着ている彼らが背負っている名前が、彼らに自信と風格を与えていたのだと思いたい。 試合の当日、ミウラさんは早朝からお店を開けてくれた。ここで1時間ほど練習をしてから行くのだ。 練習しているうちに段々と暗い気分になってくる。入らないのだ。 しかし、この期におよんでうだうだ言っていも仕方が無い! 今のうちに外すだけ外しておくのだ! 外し溜めだ!! といやー!!! マーキュリーからエントリーするのは、私とミウラさんとMさんとK君。 4人とも予選は同じ会場だ。音羽町にある「ジャスト」である。 2台の車に分乗して会場に向かう。 車中、馬鹿話で盛り上がる。 「耳無し坊一って、やっぱりあそこにも経文を書いてもらったんだよね? だって、耳は取られたけどあそこは取られてないよね。」 「もし取られていたら、『耳無し坊一』じゃなくて『玉無し坊一』になるじゃないですか〜〜〜〜!」 「ぎゃはははは! きっと自分でしわを延ばして和尚さんに書いてもらったに違いない!!」 「ぎゃはははは!」 何度もHTに出ているせいか、公式戦に出場した経験があるせいか、はたまたこの馬鹿話のお蔭か、試合の直前まで極度に上がることはなかった。 会場に着いたとき、既に多くの出場者が集まっていた。 ちょっと意外だったのは、ベストを着ている人の多さ。ひょっとしたら過半数の人が着ていたのではないだろうか。もしベストを着ているのは自分たちだけだったらどうしよう、という心配は杞憂だった。 フィーを払い、空いている席に腰を落とした。表に煙草を吸いに行ったり、入り口に張ってあったトーナメント表を見たりしながら、時が来るのを待った。 遂に開会式が始まった。ルールの説明や注意事項などの説明があり、そしていよいよ対戦カードの発表があった。 私の名前は呼ばれなかった。まだ暫く後らしい。なんとなしに参加者の人間ウォッチングをしたり、そばの台で行われている試合を観戦して、更に時を待った。 う〜、早く俺の名前を呼んでくれ〜。 ジャストには台が9台ある。殆どがガリオンだが、1台だけちょっと変わった台がある。台の横に「made in France」と書いてある、ポケットの中に球が溜まるタイプの台だ。つまり、試合の後には必ず6つのポケットを回り、ポケットの中から球を取り出さなければならない。 そういえば去年の岐阜国際オープンのときもこんな感じの台だったっけ。9ボールを落とした後におもむろにポケットから球を一つ一つ取り出しながらゆっくりと席に着く。あの時、その仕種がなんとなくカッコ良く感じた。 もしあの台で試合することになれば、私も同じようにポケットを回り球を取り出さなければならないのだ。 うふ。それはちょっと魅力的かも。私もカッコ良く見えるかな? しかし、ただ一つだけ大きな問題がある。それはお店の入り口に最も近い位置にある「華台」なのだ。当然、その台の周りはスペースが多いのでギャラリーも多い。 撞いてみたい気もするが、実際、あそこで撞くのは勇気が要るな・・・。 「マーキュリーとしおさん、○○○○さん、9番台です」 おっ、やっと出番だ! で、9番台ってどこどこ?? ・・・。 made in Franceじゃん・・・。 遂に試合開始。 対戦者に挨拶をし、バンキング。 相手もベストを着ている。むむむむ。 しかし、今日は私もベストを着ている。ふふふふ。互角だな。 バンキングは力加減が合わなかった。かなりオーバーした。むむむむ。 さてと、ラックだ。ラック、ラック・・・。あれ? そうか、この台は球が流れてこない台だった。じゃあトライアングルは一体どこにあるんだ? 辺りをあたふた探す。 よくよく見たら椅子の上に置いてあった。 う〜ん、いきなり恥ずかしいことをしてしまった。 因みにメカニカルブリッジも、掛けておくところがないので床の上にそのまま置いてあるだけ。本当に変わった台である。それとも昔はこんなのが普通だったのだろうか。 対戦者はやはり上手い。セーフティをするときはきっちりと隠してくる。これでは私は当てに行くのが精一杯。やばい。しかし相手も緊張しているのか、時々大事な球を抜いてくれる。フリーボールをもらい、ギャラリーの視線を受けながら一生懸命入れるのだが、私もそれほど難しくない9番を抜いてしまう。 う〜ん、いかんいかん。 スコアはあっという間に0−2で相手リード。 相手の8番スクラッチで1ポイント得るも、私も9番スクラッチで相手にポイントを与えてしまう。1−3。 次に9番の殴り合いで辛うじて1ポイント取り、チャンスボールからの取りきりでなんとか3−3の同点に追いついた。 ヒルヒルだ。泣いても笑っても、次のゲームの9番を落とした方が勝ちだ! ブレイクから頑張って5番まで落としたが6番に出ず、シュートミス。相手に番を回す。残りは渋かったが、相手はロングの薄いカットを見事に決めた。そしてそのまま8番まで取りきった。残すは9番のみ。相手も9番シュートミスを今までに何回かしているので、もう一度だけ俺に撞かせてくれ〜、と願ったのだが、相手は慎重に撞きゲームボールを沈めた。 ふぅ。 結果3−4で負け。いきなり裏側から上がらなければならなくなった。 マーキュリーの4人のうち、初戦で勝ったのは1人だけ。他の3人はもう後がない。 やばいのは私だけでなかった。 最初の試合から次の試合までのインターバルが長かった。人数が多いので仕方が無いと言えば仕方が無いのだが・・・。 お昼時になったので近くのコンビニまで仲間と歩いて行く。胃にもたれたらいけないと思い、おにぎり2個とお茶だけにした。 食事が済んでもなかなか呼ばれない。 う〜ん、マジで長い。 と思っていたら、やっと私の名前がコールされた。今度は普通の台だ。 今度の相手はベストじゃない。普通の軽装。ベスト以外の服だと、やはり強そうに見えない。私の気のせいだろうか? 相手はベストを着ている私を見て、どんな風に思っているのだろうか。 強そうだ、とか思ってくれているのだろうか。 挨拶をしてバンキング。 またもや力加減が合わない。 ったく、バンキング下手糞だ、こりゃ帰ったら特訓だな。 2回戦目の相手は1回戦目の相手に比べたら、凄みは感じられなかった。(ベストのせい?) 入れも出しも確実に決めてくる訳ではない。しかし要所でのミスが少なかった。また、相手のナチュラルセーフティ連発で(ひょっとしたら2ウェイだったのかもしれないが私にはナチュラルセーフティにしか見えなかった)私は度々フリーボールを渡してしまった。 そんな感じであっという間に0−2。 これはやばい。 3ゲーム目、やっとチャンスらしいチャンスが回ってきた。 5番が見えている上にポケットに通っている。逆フリだったので思いっきり押して短クッションに入れ、逆にひねって強引に6番に出した。我ながらナイスショット。しかし良く見たらフリがない。押して6番をポケット。手球は思ったより前に進み、ポケットの5センチ手前のところでやっと止まった。ふぇ〜、危ない危ない。こんな危険な出しはもうしたくない。 7番、8番と落とし、9番に向かった。このとき、何度も悪いイメージが脳裏をぐるぐると回った。ちょっとちびってしまったが、なんとかぎりぎりで入ってくれた。1ポイント返した。 次のゲームは5番を入れるポケットがなく、かなり悩んだ。開き直って5−9コンビラインに出したら、本当に9番をコンビで落とすことが出来た。 これで2−2の同点に追いついた。やってみるもんだ。 さぁ、ここから逆転だ! と意気込んでみたものの、気分だけが空回り。 相手に4番を渡したら、そのまま取りきられてしまった。 ラックはいつも慎重に組んでいるのだが、どうやら9番を死にしてしまったらしく、ブレイクで他の球とキスすることなく真っ直ぐコーナーポケットに向かっていった。 うげぇ。 あぁ、2−4で負けてしまった・・・。 マーキュリーの4人の中からただ一人順調に勝ち進んでいったのはMさん。予選を勝ち組から突破した。流石だ。 決勝戦の1回戦は予選会場で行われ、2回戦からは豊川市の「ポケットギャル」に会場を移して行われる。 あと一つ勝ったら、ポケットギャル行きが決定する。 決勝1回戦が始まったのは午後8時頃だっただろうか。開会式が行われてから既に約10時間経過している。 Mさんも上手いが相手も勝ち上がってきただけあって、やはり上手い。しかし、お互い疲労の色が隠せない。しばしばイージーな配置をミスする。スコアは3−3のヒルヒルとなった。 あんなに賑やかだった会場が、今はとても静かだ。 選手の足音、球が転がる音、クッションに当たる音、ポケットする音、そしてレールを伝わって球が流れる音が鮮明に聞こえる。 会場に残っているのは運営と数人の応援、そして二人の選手。 9番はコーナーポケットの角に当たり、ポケットを拒絶するかのように激しく振動する。 会場は一瞬溜息に包まれる・・・と、その瞬間、まるで足でも滑らせたように9番はポケットの中に落ちていった。 笑い声と大きな拍手が響き渡った。 マーキュリーから出場した4人から、ただ一人だけMさんがポケットギャル行きを決めた。 私たちも大抽選会の景品を目的にポケットギャルに向かった。 今回の景品は凄い。今までどのような景品が用意されていたのか、そもそも今まで抽選会なるものが存在したのかどうかも知らないのだが、今回はなんと景品にオリビエとACが1本ずつ用意されているのだ。これはもう行くしかないだろう。 決勝の1回戦、Mさんの相手はかなり上手い。Mさんも善戦したのだが2−4で敗れ、17位タイ、賞金5000円を手にした。 「残念でしたね、10万円まであと少しだったのに。」 「えっ? 10万円?!」 「優勝者の賞金は10万円だって書いてありましたよ。」 「知らなかった! だったらもう少し頑張れば良かった!」 「はは・・・・。」 夜10時を過ぎたころだろうか。やっと大抽選会が始まった。会場の決められた場所に選手が集められ、ビンゴカードが配られた。 運営から、当選者にはあとでCSカードを提示してもらいます、とか、写真撮影もしてもらいます、といったような説明があった。なるほど、不正は許さないよ、ということね。 非常に盛り上がったビンゴ大会だったが、我々マーキュリーの面々だけは全く盛り上がらなかった。リーチにかすりもしない。あっと驚く逆転劇を期待したのだが、何も無くビンゴ大会は終了した。 明日は平日だ。残りの試合を観戦したい気持ちはあるのだが、もう帰ろう・・・。 こうして、私の初めてベストを着て過ごした長い一日は終わった。 帰りの道中、応援に駆けつけてきてくれた妻と色々なことを話す。 やはりB級戦だった。マーキュリーの人の試合に限らず、色んな人の試合を観戦したのだが、私のような背伸びB級が勝ち進むのはちょっと難しかった。 しかし、全く勝てない相手ばかりだ、とは思わなかった。もう少し経験を積んで、もう少し練習して、できればもうちょっぴり運がついてくれれば、私でも周りの人と互角に戦えるのではないか、というようなことを妻に話した。 ちょっとだけ私とB級の差が分かった。 まだまだC級ど真ん中、と思っていたのだが、ひょっとしたらもうちょっとでB級と言えるのかも知れない。 未だにマスワリ経験なし、ボーラードもアベレージ55点。 マスワリが出せて、ボーラードも100点ぐらい出るようになったら、B級宣言しよう。 その日はそんなに遠くないような気がする。 何となく。 『耳無し坊一』の話だけはするんじゃなかった。 呆れられた。 最後に 坊主の話はただ一人、強い反対意見があったので流れてしまいました。 その反対した人だけが決勝に進みました。 反対しなければ三人の坊主頭を見ることができたのに。 あぁ勿体無い。 |
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| ◇ 結果 ◇ | ||||||||||||||||
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