lime
←PR キューショップジャパン ←外部リンク スペースG ←外部リンク
累計 累積カウンタ 閲覧中
本日 本日カウンタ 昨日 昨日カウンタ
トップ ←当HP名称 説明 掲示板 過去ログ 集計 用語登録 チャット リンク ビリ本 ビリ宿 球屋巡礼 提携広告主 一日一撞 随筆 入院日記 とし歴 ぴぃ歴 球哲学 ルール 粗材 戦 更新履歴 自己紹介
とし歴
◆ 三度目のHT ◆
 ビギナーズカップに参戦してきた。
 9月はあの有名な「東海豪雨」のため参戦を断念したが(とてもではないが、ビリヤードをするなんて状況じゃなかった)、今月もHT前日まで参戦できないだろうと思っていた。仕事が激しく忙しいためである。忙しいと言っても、会社に泊まりこみという最悪の事態にまでは陥っていないが、しかし、毎日が午前様である。
 社内のごく身近な、私の趣味に理解を示してくれている人には予め「火曜日はHTがあるので定時で帰らせて欲しい」と言ってあり、快く了承してくれている。それでも実際、状況によっては帰られなくなることも充分考えられる。
 そしていよいよHT当日がやってきた。残念ながら仕事の忙しさは相変わらずだ。実際、前日も日付が変わるまで仕事をしていた。やはりHTに出ることは無理か・・・。そんなことを思っていたとき、
 「としおさん、今日は試合の日ですね。」
と話し掛けられた。ああ、今日は試合の日だがこの調子じゃ出れないよ、と言おうとすると、
 「がんばってきてくださいね。」
と言われた。
 おお! お前はなんていい奴なんだ!!

 この彼は最近キューを買った。元々「ビリヤードで遊ぶ」という程度にしかビリヤードのことをを認識していなかったようだが、今は違う。「スポーツとしてのビリヤードを楽しむ」という姿勢に変わってきたことがはた目で見ても分かる。
 私の日頃の熱いビリヤードの話が彼をそうさせたのかどうかは分からないが、いずれにしろ仲間が増えて嬉しい。彼がキューを買ったという話を聞いたとき、嬉しさのあまり名古屋の日本玉台まで行ってキューハンガーを買って彼に譲ってしまった。定価で。
 私のいるチームのもう一人も、「行ってきなよ」と言ってくれた。因みにこの彼は、まだキューを持っていない。かなり以前から欲しいとは言っているが、未だ奥さんの理解を得られていたいため買う踏ん切りがつかないらしい。
 私は良き理解者に囲まれて仕事をしている。なんて嬉しいことだろう。ますます仕事にも熱が入るというものだ。今日は、彼らの言葉に甘えよう。
 午後6時、周りの者に礼を言い退社した。自宅についたのが午後7時。妻はすでに夕飯の支度をし終えて待っていてくれた。大急ぎで飯を食い、キューを持ってすぐさま出発! 見事な連携プレー。妻にも感謝。受付締め切り10分前にオークランドに着いた。



 オークランドに着くまで「間に合わないかもしれない!急がねば!!」と、ずーっと思っていたので緊張する暇も無かったのだが、フィーを払った瞬間にドキドキしてきた。全く俺って奴はつくづく肝っ玉の小さい野郎だ。

 会社の仲間にもがんばれって言われた。
 妻にもがんばれって言われた。
 そして、私ががんばれるよう、努力をしてくれた。
 結果が悪くてもいい、みんなに胸を張って報告できるよう全力を尽くそう。
 後悔は残さぬようしよう。
 それで例え全敗になろうが、1ゲームも取れなかろうが、それでいいじゃないか。
 しかし、目標はしっかり見据えて行こう!
 目指すは予選突破だ!
 キューを組み立てながら、そんなことを考えていた。

 今月はだいぶ人数が多いようだ。19名もいる。
 予選は3ブロックに分かれ、それぞれのブロックの上位2名と全体で成績が優秀だったもの2名、合わせて8名が決勝トーナメントに進める。
 予選はリーグ戦なのだが、全ての人と試合するのではなく主催者が選んだ4名と対戦することになる。
 決勝に確実に進むためには全勝しかない。たとえ3勝1敗だったとしても、決勝に進めない可能性がある。2勝2敗では、かなり厳しいだろう。
 人数が多いだけ、決勝の門が狭くなった。

 そして遂に組み合わせが発表された。



 名前とテーブルナンバーが次々とコールされていく。
 このコールでは私の名前は呼ばれなかった。これはかなりラッキーだ。今のうちに気持ちを静めよう。
 気持ちを静めるためには深呼吸だ。深呼吸が一番いい。
 目を閉じて大きく深呼吸をするのだ。
 ゆっくり息を吸ってえぇ、吐くうぅ・・・、すぅぅぅぅーー、ふ
 「○番台、としおさん、○○さん」
 もうかいな!! ちょっと早くない? ってゆうか、絶対に早いって。息も途中までしか吐いてないんだけどさぁ。
 ビギナーズカップは全員2先、優勝経験者のみ3先なので、試合の流れが早い。大方、バンキングでブレイクを取って1−9コンビの次にエースを決めた、というような試合でもあったのだろう。知らんけど。

 椅子の横にある棚にブレイクキューと荷物を置き、対戦者に礼をし、キューを構える。
 いよいよ試合開始だ。
 さて、この最初のバンキングだが、私の今までの経験からいくとこのバンキングが大事だ。
 バンキングに勝った負けたは別にして、もし思い通りのバンキングが出来たら、頭は緊張しているが体はそれほど緊張していないということだ。すぐさま実力を発揮できるようになるだろう。
 「上手くいかないかも」と考えながらバンキングして、やはり上手くいかなかったとしても、これも悪くない。頭と体の同期がとれているってことだ。逆に言えば「上手くいくかも」と考えられるようになれさえすれば良い。
 今日の私は全然駄目だ。ついた瞬間「いいかも」と思ったくせに、球は手前短クッションに入っても止まらずセンターラインを超えて遥か彼方へ行ってしまった・・・。「全然駄目」どころの騒ぎじゃないかもしれないんですけど・・・。



 バンキング大失敗のあと、なんであんなに走ったんだろう?この台は早いラシャなのかな?なんてことをラックを組みながら考えていた。
 今思えば、あれは勿論ラシャの所為ではない。緊張で力加減が出来なかっただけだ。こんな精神状態のときは、軽く撞いたつもりで勢い良く走ることもあるだろうし、強く撞いたつもりで弱すぎることもあるだろう。私はそういう状態だったのだ。こういうことにもっと早く気が付けば良かったと思う。

 丁寧にラックを組み相手のブレイクを見る。
 丁寧にラックを組み相手のブレイクを見る。
 そしてありがとうございましたとお辞儀をする。
 これで初戦終了。
 2−0で負けた。

 いや、あのね、試合内容を書いてないけど、手抜きちゃうよ。この試合は本当に全然覚えておらんの。1度もチャンスがなく敗れた訳ではないと思う。多分1ゲームに何回かは撞いたと思う。

 兎に角、負けてしまった。
 これで確実に決勝トーナメントに出るには、残り全部勝たなければならなくなってしまった。
 緊張が加速する。



 ビギナーズカップ2戦目。
 この試合は初戦とは全く対照的に、とても印象に残る試合になってしまった。
 椅子の横にある棚にブレイクキューと荷物を置き、対戦者に礼をし、キューを構える。
 いよいよ試合開始だ。
 私はそんなに馬鹿じゃない。同じ過ちは犯さない。
 バンキングで力加減を間違わぬよう何回かストロークし、キューをゆっくり長く出した。球は向こう側の短クッションで反射し、わずかにコースを変えた。そして手前コーナーポケットにゆっくりと吸い込まれた。
 俺は馬鹿か?
 力加減を気にするあまり、他のことを忘れてしまったのか。
 とほほ。

 丁寧にラックを組み相手のブレイクを見る。
 相手のブレイクはノーインだった。順番が回ってきた。
 1番、薄くカットしたのだが外れてしまいナチュラルセーフティーになる。
 相手はファール、フリーボールをもらい1番を入れる。
 2番、薄く抜いてしまいナチュラルセーフティーになる。
 相手はファール、フリーボールをもらい2番を入れる。
 ネキを失敗し3番をイレイチで狙うも外す。
 相手はこれを入れるが痛恨のスクラッチ。
 あっ、2ファールって相手に宣言しなかったなぁ。なんてことを思っていたら、
「私、3ファールです。」
と相手のほうから言ってきた。
 私はちょっと驚いた。この荒んだ世の中、何て正直者の若者がいるのだろう。まだまだ捨てたもんじゃないな。しかし、彼は3ファールの条件を知らないでいるらしい。彼の正直さに応えてちゃんと教えてあげよう。
「2ファールの宣言を私はしていませんよ。」
と私は言った。しかし、相手はこれを理解してくれなかったのだろうか。トライアングルを台上に置いてしまい、配球を崩してしまっていた。

 ああ、しまった!
 言葉が足らなかったのだろうか?
 悪いことをしてしまった・・・。

 こんな形で、私は今大会で初めてのポイントを得た。



 なんだか後味が悪かった。もっと強く言って、相手がラックを組む前に3ファールが成立するための条件を説明するべきだったのだろうか。普段の私なら、相手が8番か9番でスクラッチしたら喜んでポイントをもらって、「ラッキーラッキー♪」なんてことを考えるが、2ファール宣言の無い3ファールでポイントをもらっても、嬉しくとも何とも無い。

 しかしだ、私はマッチポイントを迎えた。このチャンスを逃す手はない。
 今ひとつ気持ちの整理が出来ていないが、スイッチを切り替えて、ここはしっかりと勝ちを取ろう!

 この大会、初めてのブレイクショットだ。
 相手はラックを組み終えたようだ。
 右側長クッションから少し離れたところに手球を静かに置く。
 キューの先を1番に向け、ゆっくりとレールに下ろす。
 ビーパラで人見さんに教わったレールブリッジ。人差し指と中指の間でキューをはさみ、親指の甲をしっかりとキューに当てた。
 スタンスを確認し、大きく息を吐きながら前にかがんだ。
 ゆっくりと息を吸い込む。
 手球の撞点を凝視し、ゆっくりとストロークを始める。
 徐々に右手にキューの重さがはっきりと伝わってきた。
 視線を1番に移す。
 緩やかにキューを上げる。
 重力加速度を利用する感じで、全身の筋肉を使いながら、体の重心を前に移動しながら撞く!

 手球は1番を捕らえたあと、放物線を描きながら遥か遠くへ飛んでいった・・・。
「ごめんなさああああーーーぃ!」
と叫びながら手球のあとをダッシュ。
 やれやれ、今日の私は格好悪いなぁ。

 いや、でも、ちょっと待てよ。
 私はブレイクが苦手だ。
 手球が場外したことは今までに何度もあるのだが、今のようにブレイクで場外球になったことは数えるぐらいしかない。
 しかも、あんなに飛んだのは初めてだ。
 台上を見ると、どうやら2個ポケットしたらしい。
 9番の位置も普段と違い、かなり移動している。
 ちょっとだけブレイクショットのコツが、初めて分かったような気がする。

 対戦相手の顔をのぞくと、かなりの動揺が伺える。
 3ファールの影響か、それとも私のパワーブレイクに驚いたか?

 ビギナーズカップはまだ始まったばかり!
 残り3試合全部勝って、決勝に進むぜ!!



 対戦相手は、やはり3ファールを犯してしまったことで緊張しているに違いない。
 表情からありありと見て取れる。
 あと1ゲーム取れば、私の勝ちだ。
 なんとしてでも、勝つぞ!

 C級同士のゲームによくある展開になった。
 入れても出せない、出せても入らない、バンクやコンビといった難しいショットを決めても、ポジションが出来ていないので次につながらない。
 こんなことをお互い繰り返した。
 自分も真剣だったが、相手も真剣だ。後がない。
 無言のままのプレーが続いた。
 相手のプレーを静かに見る、そして慎重に撞く、出来るだけ後悔の無いように。
 静かだったが、熱かった!

 結果、まくられて負けた。
 これで0勝2敗だ。
 しかし、我ながら意外なことなんだが、気分はすがすがしい。
 自分なりに全力を出せたということなんだろうか。
 久し振りの小気味良い感覚。
 HTでこんな感じを味わったのは初めてだ。

 気が付いたら、3ファールの後味の悪さも、過度の緊張もどこかに行っていた。



 ビギナーズカップ3戦目。
 もう2敗してしまったので、決勝に進むことはできないだろう。
 だが、これが良かったのかも知れない。
 これで良かったのかも知れない。

 勝つことにこだわらなくなった。
 負けてもいいやと思うようになった。
 前の試合がそうだった。
 負けたけど、終わったあと、気分が良かった。
 気分が良ければ、それでいいんじゃないかな?

 挨拶をしてバンキングをする。
 今までのバンキングと比べると、何だか球の走り方が違うような気がする。これは何て表現したら良いのだろう。何となく自分の意志がしっかりと球に伝わったような感じだ。
 そして球は、手前短クッションにちょこんと触れれたあと、そのままそっと停止した。

 思わず微笑む。
 心の中で小さくガッツポーズ。
 これはかなり嬉しいことだ!

 短クッションと球の距離はチョーク1個分ぐらいだった。
 やればできるじゃん俺!
 最初っからそうやれよ俺!
 何だか、だんだん調子が出てきたぞ俺!

 そして、今日2回目のブレイクショット。
 ゆっくりと素振りをしながら少し目を閉じる。
 最初のブレイクショットを思う。
 そしてブレイク!
 少しだけ力を抜きコントロールを重視した(つもりの)手球は、確かに1番に真正面に当たり、球1個分だけ浮いてからゴトンとその場に停止した。1番はサイドポケットの角に当たり、反対側のサイドポケット前に停止した。

 ・・・今のは何だ・・・?
 いま、確かに、手球の動きがはっきりと見えた。
 いつもならば1番に当たったあとの手球の動きでしか正面に当たったのか左右にずれたのか判断できないのだが。しかし、今のは良く分かった。
 今のは何なんだ?

 そんなことを考えながらプレイキューを取りに行った。
 そばで座っている対戦相手が、小声でそっと言った。
「あの〜、」
 ん?
「ごめんなさい。ラック、何だか甘かったみたいですね。」
 台上を見ると、確かに三角形の塊がある。
 ああ、これことか。気付かなかった・・・。
 それにしても綺麗に三角形に残ったなぁ。相手が言うとおり、ラックが甘かったのだろう。まぁ、俺もチェックしなかったし、仕方ないか。それに、1番、2番、3番は簡単な取り出しだし、運がよければ割れるだろう。
「いいですよ、いいですよ。」

 プレイキューにチョークを塗りながら、狙いを定める。手球と1番の位置をしっかりと確認し、手球の動きを想像する。そして、ゆっくり構える。
「あの〜、」
 なんじゃい、まだ用かい。ってゆうか、もうアドレスに入っているんだから話し掛けるな!
「ノーインなんですけど。」

 うげ!



「いや〜ん、ごめんなさい。俺ってば緊張しているみたいですねぇ〜。本当にごめんなさい。ほほほほ。」
と言いながら席に戻った。
 ふぅ。
 ひぃふぅみぃ・・・、ほんとだ、球が10個ある。
 いつもならブレイクしたあとはポケットした球があるかどうかを必ず確かめるのだが、理想に近いブレイクが出来てしまった上に取り出しがあまりにも良いため、取り方のことばっかり考えてしまったのだろうか。
 う〜ん、これまた初めての体験だ。

 さて、このゲーム、でっかいトラブルが一つだけあるものの、それ以外に関してはほとんど問題なかった。
 対戦相手が順調に1番2番3番と落としていく。トラブルを解消できなかったのでセーフティーに行く。私もそれに対してセーフティーで返す。相手もまたセーフティー。激しいセーフティー合戦。といえば聞こえがいいが、ただ単に入れに行ったはずが外れてしまい、たまたまセーフティーになっているだけ。なんせ、お互いC級ですから。
 私が4番を穴前に残したことでセーフティー合戦は終わった。私が遠くの薄い4番をカットしに行ったのだが、更に薄く抜いてしまったのだ。
 相手は4番を落としたものの、取りきれなかった。残り3つで再び番が回ってきた。しかもフリーボール。絶好のチャンス!
 7番、8番と落として9番を見る。ポケット、9番、手球が完全な一直線。しかも距離も程よく近く、スペシャルイージー!

 ここで私はとんでもないことに気が付いた。気が付かなければいいのに・・・。
 7番、8番を落としたそのリズムで9番も落とせばよかったのに・・・。

 このビギナーズカップで9番を狙うのは、これが初めてなのだ。



 9番はほぼフットスポットにある。手球の位置は9番から約1ポイント離れたところ。コーナーポケットと9番と手球が完全な一直線。

 一人撞きのときは、これと同じ配置のセンターショットから始める。先ず普通の強さで、次にかなり強い強さで、そして撞点を左右上下を変えてもちゃんと入るように撞く。以前は強く撞いたり、ひねりを入れたりしたときによく外したが、最近はほぼ外さないようになった。
 そう、ほぼ外さないようになった。
 ほぼ・・・。
 ・・・、ひょっとしたら、もしかしたら、外す・・・かも・・・。

 い、いかん。悪いイメージに支配されそうだ。良いイメージを作り出さなければ・・・。そうだ、練習と同じ配置なんだから、一人撞きのことを思い出そう。
 すぐさまイメージを作り出す。一人で練習するときに行くゲーセンの2階のビリヤード場を思う。いつもの練習。いつもの配置。いつもの撞き方。そしていつもの表情。
 こんなことを書いたら笑われるかもしれないが、はたから見ると一人撞きの私の姿はきっとかなり気色悪いに違いない。笑顔なのだ。意識して笑顔で練習するように努めている。その理由は・・・、多分非常に長くなると思うので、気が向いたら後日書くことにする。

 口の両端をちょっとつり上げ、笑みを作る。
 いつもの練習どおりに撞けば入るんだよ。
 いつもの練習どおりに撞けば入るんだよ。
 いつもの練習どおりに撞けば入るんだよ。

 そして撞いた・・・。



 練習をしているつもりでキューを出す。
 的球が入ることよりもキュー出しやストロークやグリップに注意して放ったショットは、確かに9番を捕らえた。
 そして9番はしっかりとした意志をもってコーナーポケットの真ん中から入っていった。
 9番のあった位置に手球が残った。

 やった。
 やったよぅ。
 嬉しいねぇ。むっちゃ嬉しいねぇ!
 やっぱりこうでなくっちゃね!!
 3ファールでもらったポイントよりも遥かに嬉しいね!!(狙って取った3ファールだった、それなりに嬉しいとは思うけど。)

 相手がラックを組む間、相手のうしろ姿をぼーっと眺めながら余韻に浸った。
 初めてビリヤードをしたあの頃、偶然だろうがまぐれだろうが何か的球がポケットされれば、それだけで嬉しかった。みんな9ボールしか知らないから延々と9ボールばかりやっていた。9番を落とすことも勿論嬉しいのだが、それよりも連続してポケットできたときのほうが嬉しかった。
 「2個連続で落としたぜ!」
 「今日の俺はどうしたんだ、連続で3個も落としたよ!」
 こんな感じだった。
 今、私が感じている嬉しさは、このときに感じた嬉しさと同じだ。
 不意にビリヤードを始めたばかりの頃を思い出した。

 2ゲーム目のブレイク。
 なんだか、ゲームを消化するたびに強烈なブレイクが出来るようになってきた。
 私はいつも右側からブレイクをする。左側からブレイクしたとき、一度右手をテーブルに強打したことがあるからだ。これは本当に痛かった。その場で30秒ほど動けなかった。動けるようになってすぐトイレに行って冷やしたのだが、その後半日ぐらいは痺れがとれなかった。右側からブレイクすれば、右手がテーブルにぶつかる心配は少ないと思う。

 このブレイクでも右側からブレイクをした。すると9番が他の球にはじかれながら私の立っているところまで転がってくるじゃないか!

 おっ?
 おっ! おっ! おおおおおっ!!! 入れ〜っ!!!!



 9番は確かにコーナーポケットに真っ直ぐに向かっていた。が、しかし、ちょっと届かなかった。9番はコーナーポケットから0.5ポイント離れたところに長クッションからちょっとだけ浮いた状態で止まった。
 惜しい。非常に惜しかった。もう一踏ん張りでエースだったのに。
 それにしても、こんなに9番が動くとは。9番がセンターラインを超えてやって来ることでさえあまり記憶にないのに、況やヘッド側のコーナーポケットに入りかけることをや。このHTで、本当にブレイクが上達したかも?

 そして7番が9番のすぐ後ろに停止した。
 こりゃあ、9番をポケットするなら7−9コンビだな。

 ブレイクでノーインだった私が次に撞いたのは、台上に6〜9番が残っているときだ。6番は右側フットコーナーポケット前にある。7番と9番の配置は変わっていない。8番はセンタースポットから1ポイントぐらい6番に近づいたところにある。手玉は右側サイドポケットに近いところにある。つまり、台の右側半分に全ての球がある格好だ。
 6番を落とすことについては問題はない。そのあと、7−9コンビを確実に決められるところにポジションしたい。
 手球と、7番と、7番を9番に当てるときのイマジナリーボールが一直線に並ぶところにポジションするのが理想だが、まぁ、7番が見えていて、しっかりと撞けるところだったらいいだろう。

 手球を撞いた。
 7番に近すぎるところにポジションしても困るので、少し弱い押し球のつもりで撞いた。
 手球は6番をポケットし、そのまま短クッションに入り、ころころって転がった。
 そして、8番に隠れてしまった・・・。

 あぅ・・・。
 弱すぎた・・・。



 手球から7番は完全に見えない。
 不味い、非常に不味い。
 直接当てられないならば空クッションから当てるしかないが、実は私はシステムをあまり知らない上に空クッションの練習もほとんどしたのとが無い!
 今の自分の知識と技術を総動員し、何としてでも7番に当てなければならない。さもなくば相手はフリーボールから7−9コンビを簡単に決めるだろう。
 あ〜、BeParadiseの解説書のシステムをもっと真面目に読めば良かった。
 あ〜どうしようどうしようどうしよう。

 どのクッションを使っても7番に当てるのは難しそうだ。ひねりが必要になるか、入射が短く反射が長くなってしまう。
 私はまだどのぐらいひねってクッションに入れれば、どのぐらい開くのか、良く理解していない。
 それに、反射してから的球に当たるまでの距離より、入射するまでの距離が短い場合は、非常に難しく感じる。
 更に、入射角、反射角が直角に近いほうが易しく感じ、45度ぐらいが難しく感じる。
 その上、2クッション、3クッションで当てたくとも、どうしたらいいのか全く分からない。
 つまり、「ひねらずに」「1クッションで」「クッションになるべく直角にいれて」「クッションから的球までの距離が短い」という条件をクリアした配置が良い。
 しかし、どのクッションに入れても、これらの条件を満たすことはない!
 あ〜どうしようどうしようどうしよう。

 おっ、そうだ。俺はブレイク&ジャンプキューを持っているんだった! こうなりゃジャンプショットで・・・。いかん、8番と手球が近すぎる。その前に俺はレール上でブリッジを組まなければジャンプショット出来ないんだった。
 おっ、そうだ、マッセで・・・。やったことが無い。
 う〜ん・・・。
 あ〜どうしようどうしようどうしよう。

 おっ、そうだ、わざとファールで9番をポケットしよう。ポケットできなくてもあの7−9コンビの配置が崩れれば、それでいい!
 ・・・いや、駄目だな。7番に当てるのも難しいのに、どうして9番に当てることができようか。
 おっ、それなら、8番に当ててから7番か9番に当ててしまえ!
 ・・・手球と8番が近すぎて、それも難しい・・・。
 うう・・・、なんって完璧なセーフティーなんだ。
 あ〜どうしようどうしようどうしよう。

 こりゃ、マジでピンチ!



 さんざん悩みに悩んだ末、私が選択したのは次のようなショットだ。
 前述した、「ひねらずに」「1クッションで」「クッションになるべく直角にいれて」「クッションから的球までの距離が短い」の4つの条件のうち3つを満たすショットだ。8番をぎりぎりかすらないラインでヘッド側短クッションにゆっくり入れ、マキシマム左ひねりで7番に当てる!
 これだ・・・、これしかない・・・。

 絶対にファールは許されない。ミスキューをしないように丹念にチョークを塗る。
 手球の左いっぱいにタップを合わせ、何度もストロークを繰り返す。
 入れるべきクッションを見据え、ゆっくり、そして長くキューを出した。
 手球はセンターラインを超えた辺りで微妙にカーブしながら短クッションに入った。
 そこで左に開け!
 思わず手球の動きに合わせ、ぴょんと、左へキュー先を動かした。
 そして、手球は自分の想像以上に左に開き、7番ではなく9番に当たった。
 残念ながらファールになったが、それでも7−9コンビの配球を壊すことに成功した。

 ファールになったものの、7−9コンビは狙えない形になった。取り敢えず最悪の事態は免れた。
 やるだけのことはやった。あとは椅子に座って、じっくりと相手のプレーを見よう。
 相手は7番をポケットしたものの、8番で外してしまった。8番は穴前で残った。
 再びチャンス到来。もう同じミスはしないぞと、自分に言い聞かせる。
 ちびりそうになりながらも8番、9番と、何とか取り切り、やっと3戦目が終わった。

 3戦目が終わっても暫くの間、私の興奮はなかなか冷めなかった。
 あの7−9コンビ崩しは、ファールとは言え私の中ではかなりのナイスショットだったのだ。実際このとき、頭の中で勝手に何回もリピートしていた。
 それにしても、良かった良かった。
 やっと勝てたよ・・・。

 これで1勝2敗。
 残すはあと1試合となった。



 ビギナーズカップ4戦目。
 挨拶をしてバンキングをする。
 私はだいぶ強めの球を撞いてしまったが、相手の球は更に強かった。

 ブレイクは良かった。以前に比べたらかなり勢いのある球を撞けるようになったと、確かに感じる。しかし、コントロールに難がある。このブレイクでも手球が大きく動いてしまった。散った的球がぶつかって動いたのではない。1番に少し薄く当たってしまい、動いたのだ。
 実は今までブレイクの練習はほとんどしたことがなかったのだが、これからはしっかりすることにしよう。今ほどの勢いのある球を撞けるならば、多少勢いを殺してでも確実に100%の厚みで当てよう。これが出来たらかなりの武器になるはずだ。ブレイクスクラッチの確率も減るだろう。タップの丸みも色々工夫して見よう。

 HTでは慎重に厚みを測るがあまり、いちいち先球とポケットを結んだ延長線上にあるイマジナリーボールを作って、その中心にキュー先を置いて、手球からイマジナリーボールを見て・・・、というような作業をしていたのだが、自信のある厚み、自信のある配置は、この作業を省こう。
 折角直感で厚みを感じたのに、上記のような余計な作業をしてそのイマジナリーボールに向かって撞くと、何故か薄く外すことが多い。
 勿論、自信の無い配置の場合はイマジナリーボールを想像すべきだが、直感で厚みを感じた場合は、直感を信じよう。
 そしてこれからは、直感で感じられる配置を増やしていこう。

 今回のHTで得たものは大きかった。
 今後の課題が見えた。
 多少、自信もついた。
 もうちょっとハートが強ければなぁ、とも思うが、まぁ、これはそんなに意識しなくても経験を積めば解決するだろう。

 1ゲーム目は相手が9番を抜いてしまったのでありがたく頂いた。
 2ゲーム目は相手が8番を抜いた。練習でやったことのある配置に似ていたので、ちびらずに、練習どおり撞くことが出来た。

 これで予選終了。
 相手に深く礼をして、やっと一息ついた。
 ちょっとラッキーな面もあったが、9番をポケットしたのは紛れもない私自身なのだ。
 それにしても、こんなにあっさり勝つこともあるんだな。

 これで全ての予選が終了した。



 今回のHTの成績は2勝2敗となった。
 この数字は決して良い成績とは言えないが、しかし、私は満足している。
 得たものがあった。
 そして、その得たものは大きかった。
 HTに出ることなく、ただ一人で練習をしたり、仲間内で撞いているだけでは、なかなか得ることは出来なかっただろう。
 これからも積極的にHTに出よう、そして、もっともっと上手くなりたい!
 こうして私の3度目のHTは幕を閉じた・・・。

 と思ったら、背後から美人店長が「ごめんなさーい!」と叫んでいるではないか。なんだなんだ???
 話を聞くと、どうやら私のブロックは運良く(?)決勝進出ラインが2勝2敗になったらしい。
 そして、どうやら一度は決勝進出8名を選び出したのだが、計算間違いで私の名前が漏れてしまったらしい。
 そして、どうやら得点、失点、得失点差全てを加味しても全く私と同じ成績の人がもう一人いるらしい。
 そして、どうやら彼と8番目の席を賭けたゲームをしなければならないらしい・・・。

 何! まだ決勝に進む可能性があったのか!!
 今回は、運も味方してくれているのかも・・・。

 これが本当の予選最終戦だ。
 ルールは1ゲーム先取り!
 万が一、エースでも出れば、それで勝ち!!
 よっしゃ、気合が入るぜ!!!



 予選最終戦が始まった。
 バンキングをするも、相手に負けてしまう。
 相手のブレイク。
 このとき、ちょっと本部席のほうを見てみると、参加者が皆こっちを見ている。
 ひぇ〜、そんなに見るなよ、緊張するよ。
 しかし、試合をやっているのはここだけ。皆が注目するに決まっている。
 なるべく、本部席のほうは視界に入れないように努める・・・。

 相手が3個ほど落としたところで、私の番が回ってきた。
 ここで、つい、ちらっと本部席を見てしまう。
 おっ、ラッキー、みんな空いている台で練習を始めている。練習をしていない人も雑誌かなんかを読んでいるようだ。
 ふぅ。やれやれ。

 2個落とすもネクストが難しく、3個めで外す。
 残りの球を相手が取り切って、ゲーム終了。
 ふにゃ。
 かなりあっけなく終わってしまった。

 結局、決勝トーナメントに進むことは出来なかった。
 一応、順位をつけるならば、単独9位ということになるのかな?
 まぁ予選落ちには変わらないんだけどね。

 次こそは決勝に進出するぜ!!!

◇ 結果 ◇
大会名 :ビギナーズカップ
日時 :2000年10月10日火曜日
場所 :豊田オークランド(豊田市)
フィー :2000円
ルール :2セット(過去優勝経験者は3セット)先取
 USナインボールテキサスエキスプレスルール、シュートアウトなし
 予選ラウンドロビン(3ブロック)、決勝シングル
 予選成績上位8名が決勝進出

参加人数 :19名
成績 :2勝2敗+1敗で予選敗退。次こそは!